<Column> 山本 拓也さんのうつわ
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しっとりとした乳白色に絶妙なツヤありの仕上げ。
温かみを感じられるものの、どこかピリッと緊張感も生み出してくれるような静けさをもつ器たち。
今回は、大阪を拠点に作陶を行う山本 拓也さんの器について少し詳しくご紹介します。作家さんの器を初めてご覧になる方や、器のご購入をご検討されている皆さまなど、ご参考までにお気軽にお読みいただければと思います。
>制作の技法について
山本さんの器は「型打ち」と呼ばれる、ろくろと石膏型をどちらも使用し成型する技法を用いて制作されます。
その製作工程は、まず、ろくろで器の形を作り、生乾きの素地を石膏型にかぶせる。その素地を布で覆い上から手で押さえ軽く叩いて型に密着させることでかたちをつくるというもの。
ろくろだけの成型より手間がかかりますが、より複雑な形状を実現できるため、山本さんの八角皿や輪花皿は型打ちならではの形ともいえます。
反対に、完全な型のみの成形より、ろくろや型を写す工程などに多くの手作業が介入するため、一つ一つには個体差が生まれ、輪郭にも揺らぎが伺えます。そのため、型のみの成形ともまた違った佇まいがあります。
>たとえばスタッキングして収納した姿。個体差がわかりやすく表れるこの姿が個人的にとても好きです。
山本さんの器には、西洋のヴィンテージの器を参考に形作られているものが多くあります。特に17世紀のオランダ・デルフト陶器をモチーフにしているものが多く、山本さんの器の印象的な乳白色も当時デルフトで特定の短い期間のみ焼かれていた絵付けのない白釉のデルフトの陶器たちがイメージの源泉になっているのだとか。
他にも、こちらのマグカップはフランスのエナメルマグを模倣して制作されたマグ(白、黒)。艶ありの釉薬が相まって本当の琺瑯にも見えてくるのが面白いです。近くへ寄ると焼き物ならではの釉薬、土の表情が見えてきます。
>土と釉薬
山本さんの器の特徴の一つである乳白色は表面にかかった透明の釉薬が結晶化することで生まれる絶妙な奥行きから生み出されています。また土は半磁土を使用しているので、陶器と比較して強度もあり、食洗機がご使用いただけます。釉薬がひけるエッジ部分の土の色味も魅力の一つです。ataWで開催した個展 「still life」(2024.12.〜2025.01)では、グレーや黒色もツヤありの釉薬で仕上げていただきました。グレーと黒は、生地の土に、黒色を混ぜてトーンを落とすよう調整されており、釉薬が透けて見える土の色にまでこだわりが詰まっています。
>焼き物ならではの特徴
山本さんの器は一見すると均質であるように見えますが、先述した通り、手作業も多く介入した制作方法をとっています。そのため、一つ一つに形の歪みや微妙な色味の個体差、ピンホールや黒点、目跡などが見られます。焼き物ならではの特徴としてお楽しみいただけますと幸いです。
ぜひ、山本さんの器を日常のシーンに当てはめて想像を膨らませつつ選んでみてください。
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